KID FRESINOが世界に送り出すài qíngというアルバムのこと

たとえば、KID FRESINOがビートメイカーのみを続けてラップをしていなかったとして。
そうしたらきっとài qíngのようなアルバムは生まれていなかった。僕も彼の音楽には出会っていなかったかもしれない。
彼がマイクを握ってくれて良かった。
また一枚凄いアルバムが世に出た。
ài qíng。KID FRESINOは愛情と名付けた。

KID FRESINO(以下フレシノ)はクラシックなHIPHOPを愛しているイメージだった。
サンプリングから作るビートもそうだし、ラップのアプローチも良い意味で一昔前の雰囲気を纏っていた。
全体的にミドルテンポで、ミックスも明らかに現代のサウンドは狙っていないものが大半。数年前のフレシノに対する評価の要因の一つにはそういう音楽性があったと思う。

そんな中、Coincidenceは衝撃的な一曲として世に出た。
初めて聞いたときはフレシノの音楽とは思わなかった。それくらい曲のイメージが違った。
バンドサウンドへの挑戦、変拍子の上でのラップスキル。目立つ部分はたくさんあるが、何よりフレシノがこんな曲を作ったことに驚いた。
彼は”アーティスト”への階段を一歩上がったんだなと感じた。




Coincidenceを聞くと、改めてフレシノのラップの才能に気付かされる。
声質にも恵まれているし、hookとかこの人以外作れないだろう。
フレシノの新譜、ài qíngはこの曲からスタートする。なんとも贅沢な1曲目だ。
新しい音楽の幕開けを予感させる、本当に良い掴みだと思う。

ài qíng、全曲良かった。
ダンスミュージックやR&Bに寄っている曲が多く、現代的な印象。
HIPHOPという枠組みに捉われず、ジャンルを超えた音楽をこんなにもたくさん作れるようになっているところにもまた、フレシノの進化の様がうかがえる。

使用されている曲は多くないけど、普段聞かない楽器だからなのか、スティールパンの音が強烈に耳に残った。こういう楽器選びにもオリジナリティが現れてていいよね。
リファレンスとして様々な曲はあるようだが、フレシノというフィルターを通ることで明らかに彼独自の音楽に落とし込まれている。
バンドサウンドもあり、トラックミュージックもあり、客演も豪華すぎて全く飽きない一枚。
フレシノ自身はこのアルバムも時代に浪費されていくものになるとコメントしていたが、僕個人としてはこれから長い間聴いていくものになると思う。
KID FRESINOがアーティストとしての立ち位置を何段も上にした、忘れられないアルバムになるだろう。
2018年ももう終わりそうではあるが、必聴のアルバムです。

Retardedみたいなエンディング感溢れる曲を最後に持ってくるのはマジでズルい。格好良すぎ。
もしかして、これがエモーショナルってやつですか?




これはアルバム収録曲ではなくて、単純に僕の好きなフレシノの曲なんだけどせっかくなんで是非紹介させてください。

フレシノがFla$hBackSを抜けて一人で活動を続けていくときに書いた一曲。
こんなに魅力的な日本語を歌える人でもあるんです、KID FRESINOは。

この曲を書いた時期はフレシノもFebbもJJJもきっと色んなことを考えてたんだろう。
今のフレシノの進化を考えると、自分のやりたい音楽や目指したい場所が変化してきた時期だったのかな。
時間が経ってからEasy Breezyを聞くと改めて考えさせられるものがある。

フレシノはとてもクラシカルな男で、SNSはおろかインターネット上に全く姿を現さない。インタビュー記事で読んだが、携帯も持ってないらしい。
だからKID FRESINOという人間に触れるには楽曲くらいしかない。
Easy Breezyはフレシノには珍しいストレートな等身大のリリックだ。
どんなことを考えて曲を作ってるのかなんてのは本人に聞かないと分からないわけだけど、この曲からは少しだけ彼自身が垣間見える気がする。

今日はこの辺で。
それでは。

オモテ

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