クリープハイプ尾崎世界観と僕についてのコラム

クリープハイプに出会ったのは多分2011年前後だ。
路地裏音楽戦争という音楽サイトで欠伸のPVが紹介されていて、それを見たのが初めてだった。
そのときは甲高くて気持ち悪い声だなという印象しか持たなかった。
目新しい声だけれど売れないだろうと思った。ハイトーンボイスがとやかく言われていた時期だ。彼らへの注目もすぐに無くなると考えていた。

何がきっかけだったんだろう。
僕はいつの間にかクリープハイプにドハマりしていた。
初めて聞いた時は嫌悪感すら抱いたのに、だ。
どういう経緯で手にしたかは全く覚えていないが、待ちくたびれて朝がくるというアルバムを死ぬほど繰り返し聞いていた。マジで、引くほど聞いていた。
友人に借りたのか、それともレンタルショップで借りたのか。
いずれにせよ、クリープハイプに対して何か引っかかるものはあったんだ。最初は嫌いだったけど。
多分、あんな声なのに段々と売れ始めてきてたから「何が良いんだ?」と思ってアルバムを手にするに至ったんだと思う。

そこからは早かった。
尾崎世界観という男に出会ってしまって、僕の音楽観は大きく変わった。

とにかく惹かれた。
彼の言葉、メロディ、声、言動、生活。
これがカリスマか、と思った。あんなに個人に傾倒するのはBUMP OF CHICKEN藤原基央以来だった。
尾崎という天才が絶え間ない努力を経て、クリープハイプのフロントマンとして陽の目を浴び始めるまさにその時期、僕はクリープハイプの音楽と共に過ごしていた。

僕は高校生だった。
通学中ipodで流しているのはクリープハイプだった。もちろん下校時も、そして家に帰ってからも聞いていた。
特にウワノソラという曲をリピートしていた。
2分40秒という短さのこの曲、日本で一番聞いた自信がある。そのくらい繰り返し聞いた。
“大好きと大嫌いの間でのたうち回ってる”ってフレーズが高校生の僕の大のお気に入りだった。
こんな曲を書けるやつは尾崎世界観以外に居ないと思った。
聞けば聞くほど、心をガンガン掴んで揺さぶられた。思春期で多感な時期の僕にはこれ以上の音楽はどうやら存在しないようだった。
今でもクリープハイプで一番好きな曲はウワノソラだ。

尾崎ほど曲中で同じ言葉を繰り返すバンドマンもいない。
歌詞は頑張って頑張ってひねり出して、同じワードは使っちゃいけないものだと思っていた。僕が育つ過程で聞いていた歌謡曲は全部そうやって作られていたから。
そこは本当に衝撃だった。ウワノソラなんてほとんど大好きと大嫌いしか言ってない。キャッチーを突き詰めたらきっとこういうとこに落ち着くんだろう。
「あ、そういう歌詞でもいいんだ」、そう思ったリスナーは僕だけじゃないと思いたい。大事なことは二度でも三度でも言えばいい。飾らずに言えばいい。クリープハイプはそうやって作られた歌を届けてくれていた。




高校生の僕は弾き語りで曲をたくさん作っていた。バンドマンに憧れていた。
憧れのバンド達に少しでも近づきたくて、同じ舞台に立つことを夢見て、たくさん曲を書いた。今思うと典型的な痛い高校生だ。まあでも、青春だった。

曲を書けば書くほど尾崎の凄さに気づいた。
自分が書きたいことは全部、尾崎世界観が既に歌にしていた。本当だ。
恋愛のことも、社会のことも、日常のことも、全部クリープハイプの歌になっていた。
僕が歌いたい感情は尾崎世界観も歌っていた。
そりゃクリープハイプのこと好きになるのも当たり前だよね。自分が作ろうとしてたものがそこにあったんだから。
それに気づいてからは作曲するペースもグンと落ちた。
自分が作らずとも尾崎が作ってくれる。聞きたい曲がそこにあるなら自分で書かなくてもいいと思った。
僕はステージに上がるという夢を見るのをやめた。

これは多分僕だけに当てはまることじゃなくて、リスナーの大半に当てはまることだと思う。
ファンがクリープハイプを好きな理由を挙げる時にまず出てくるのが「歌詞に共感できる」というもの。
きっと僕と同じような現象がそれぞれの聞き手の中で起こっていて、だからハマっていってしまうんだ。尾崎世界観は沼。一度ハマったら抜け出せない。

僕がクリープハイプを聞き始めて以降、彼らは右肩上がりに知名度をあげていった。
メジャーデビューをし、レーベルを変え、タイアップ曲もたくさん作られた。
僕はその成長を見ながら大人になった。たくさんの尾崎世界観を見てきた。
社会の窓を書く尖った彼も、寝癖を書く優しい彼も、イトを書く天才的な彼も、全部尊敬していたし好きだった。

色んなバンドに出会いつつも、やっぱりクリープハイプは大切だった。

数年前まではクリープハイプはまだ色物扱いだったと思う。
正直ファンの質は最悪だったし(今もそういう層は一定数いるけど)、歌ってる内容もまあ敬遠されても仕方ないものだったし。
でも最近の彼らは違う。
良い曲を生み出すアーティストとして着実に日本中に認知され始めている。このまま全国を巻き込むバンドになっていくんだろうか。いや、もうなってるか。
少し寂しい気もするけど、バンドの成長を素直に喜びたい。あんな天才が売れない訳ない。自分の価値観は間違ってなかったんだと思いたい。

これから先も僕はきっと、一喜一憂したときに尾崎の曲を聞くんだろうな。そしてその度にクリープハイプの音楽の良さを再確認するんだと思う。
出会ってから何年経ってもまだ、彼の音楽を愛してやまない。




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